REE

不適合元素(Incompatible elements)と希土類元素パターン(レアアースパターン、REE paterns)とは?

岩石の化学組成分析の際、Incompatible elements(不適合元素)とREE (Rare earth elements)は重要なtracer elements(トレーサー元素)になる。これらの元素挙動パターンについて、解説します。

不適合元素(Incompatible elements)とは?

化学 元素

『Incompatible elements(不適合元素)= 鉱物に取り込まれにく元素』 です。

鉱物に取り込みにくい原因は、イオン半径の大きさ and/or イオンの酸化数が一般的な元素たちと比べて、特徴的であると言えます。

具体的には、イオン半径が大きい、イオンの酸化数が大きいことです。

イオン半径が大きい元素の例としては、K、Rb、Th、Uなどがあります。
イオン半径は、以下のサイトがご確認ください。

https://research.kek.jp/people/hironori/nakao/lab/info/ionradii.html

イオンの酸化数が大きい(価数が大きい)元素としては、Zr(4+)、Nb(5+)などがあります。

これらの元素は、マグマが冷えて分化する際に、鉱物に取り込まれにくく、分化の最後まで液体でおり、なかなか鉱物に適合しないので不適合元素と言われます。
分化の最後まで残るので、花崗岩のような珪長質な岩石に多く含まれます。

REEとは?

周期表 REE

一般的に、REE (Rare earth element) は、Sc+Y+ランタノイド(15元素)=17元素 をREEと呼びます。上記の周期表の赤枠の元素たちののことを指します。

特に、La~Euのことを『LREE(Light Rare Earth Element)』、 Gd~Luのことを『HREE(Heavy Rare Earth Element)』と言います。

ちなみに、REEもIncompatible elementsに分類されます。そのため、花崗岩には多く含まれ、玄武岩にはあまり含まれていません。

また、REEは通常3価で存在しています。ただし、CeとEuはマグマの酸化還元性によって価数が変化します。

詳細な解説を少しフライングしますが、スラブ起源のマグマ(海洋地殻を成分を含んだもの)を含む花崗岩は、HREEが欠乏する傾向になり、LREE/HREEの値が高くなる傾向があります。

LREE/HREEの例として、La/Ybを指標にしたりします。これをマグマの起源の同定に使っていました。

REE パターン(REE pattern)

REE パターン(REE pattern) とは?

上記のREEを隕石(炭素質コンドライト、CⅠコンドライト )で規格化して、グラフ化したものがREEパターンです。

規格化は、分析したい岩石のREEを隕石に含まれるREEで割り算することでできます。

REEパターン=分析したい岩石のREE(ppm)/コンドライトのREE(ppm)

REE
出典:産総研 希土類元素の地球科学 第1回および第2回(https://staff.aist.go.jp/a.ohta/japanese/study/REE_ex_es1.htm

では、なぜこのような規格化する必要があるのか?を以下で説明したいと思います。

※炭素質コンドライトの標準値は公表されているものもありますが、出典によって異なることがあるので出典には注意してください。以下に、例としてのリンク添付しておきます

http://meteorites.wustl.edu/goodstuff/ree-chon.htm

なぜこのような規格化する必要があるのか?

わかりやすく言うと、”絶対値ではなく、相対値で評価したいため” です。

地球上に存在する元素は、存在量が全く異なります。下図のようにギザギザしています。(”Oddo-Harkinの法則”
このままでは比較しにくいので、滑らかにするために規格化します。では、なぜコンドライトで規格化すると滑らかになるのかを次章で説明します。

元素存在比
Figure . Relative abundance of the chemical elements in Earth’s upper continental crust as a function of atomic number. Rare earth elements are labeled in blue (U.S. Geological Survey, 2005).

なぜコンドライト(隕石)で規格化すると滑らかになるのか?

コンドライトは、始原的な地球(地球が形成されたとき)に近い化学組成を持っています。

太陽系は、基本的に同じ星間物質で出来ているので、太陽であれ、木星であれ、隕石であれ、元素の構成比はほぼ同じです。このコンドライト中の元素の起源として、核融合や放射壊変などによって現在の地球の化学組成になっています。

そのため、上記のギザギザ( ”Oddo-Harkinの法則” )は、コンドライトも同様である。よって、ギザギザは解消され、滑らかになります。

REEパターンは、”始原的な地球の化学組成を基準として、REEの含有量を相対的に示したグラフ”と言えます

詳しい説明は産総研の以下のサイトにもあるので、合わせてご覧ください。

https://staff.aist.go.jp/a.ohta/japanese/study/REE_ex_es1.htm

まとめ

REEパターンは、岩石起源や生成プロセスの解明に非常に有用ですので、使ってみてください

REEの個別の元素の中で特異な動きをする元素については、こちらの記事で取り扱ってますので是非ご覧ください。

REE パターン(REE pattern)詳細解

   ・LREE/HREEについて

   ・SeとEuの特異性について

参考文献

https://staff.aist.go.jp/a.ohta/japanese/explanation.htm

・http://meteorites.wustl.edu/goodstuff/ree-chon.htm

・希土類元素(REE)地球化学の新展開:REE有機地球化学とREE安定同位体地球化学, 中田亮一,2019/7/4

 https://www.jstage.jst.go.jp/article/chikyukagaku/53/3/53_107/_pdf

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