日本は地熱資源埋蔵量は、世界3位(2,300万kw)と言われており、世界有数の地熱資源国と言えます。しかし、発電設備容量で見ると世界10位まで後退します。
参照:JOGMEC 世界の地熱発電
これほどまでに日本において地熱発電の開発が進まない理由を解説します。
調査・掘削コスト
日本は地熱資源に恵まれていますが、地熱発電における掘削コストが非常に高額であるため、調査井の場合でも数億円、生産井では複数本の掘削に数十億円の投資が必要とされます。
また、日本は複数のプレートが関与する地質構造を持つため、地熱資源の調査が複雑化し、掘削しても蒸気を十分に得られない場合があります。
さらに、地熱発電において『正断層』が重要ですが、日本では逆断層や横ずれ断層が多く、商業化に適した地熱資源が限られています。
これらの理由から、他国と比べて日本における地熱発電の調査・掘削は難しく、コストが高くなる傾向にあります。
国立公園などの規制
日本は豊かな自然で知られており、その多くは国立公園として保護されています。地熱地帯も多くがこれらの国立公園に位置しています。
しかし、国立公園内では掘削や発電所の建設が許可されていません。そのため、傾斜掘りを行うことはできますが、掘削長や難易度が増すため、コストとリスクが上昇することがあります。
こうした規制が地熱発電の普及を妨げる一因となっています
温泉事業者からの反対と温泉法
地熱発電所の建設に適した場所は、通常、温泉地域に位置しています。温泉は、地下水と高温の地熱水が混ざってできるため、適切な開発を行わないと温泉に悪影響を与える可能性があります。ただし、温泉と地熱発電では熱水をくみ上げる深度が大きく異なり、温泉はおよそ数百mに対して、地熱では約1~2kmです。そのため、国内で現在までに大規模地熱開発が温泉に影響を与えた事例はないとされています。
一方で、近年は浅部の温泉を利用したバイナリー発電が増えてきております。これは温泉井戸をそのまま使うため、影響が出る恐れがあります。例えば、別府温泉では地熱発電の乱開発により地下水位が低下しているとの指摘があり、自治体が規制を強化しています。(参考:読売新聞、日経XTECH)
これらの温泉法や各自治体の法令は温泉保護の観点で重要であると言える一方で、これらの法律が地熱発電を阻害してる可能性も指摘できます。
また、温泉法や法令をクリアしても、地元住民や温泉事業者からの反対も考えられます。彼らにとって温泉は重要な経済的な柱であり、地熱発電による影響を懸念するのは理解できます。そのため、地域調査や対応策の充実が必要です。しかしこれらの対応には骨が折れ、高いコストもかかるため、地熱開発をさらに難しくしています。
投資対象としての魅力がない
地熱発電は、投資対象としての魅力に欠けている傾向があります。課題は多岐にわたりますが、お金を投じれば解決できる問題もあります。しかし、資金調達が困難であることが、最初の壁となります。
地熱開発には多大な費用がかかるため、投資が必要です。しかしながら、投資家にとっては次のような理由から魅力に欠ける側面があります。
- 掘削リスクなどの不確実性が多い
- 開発コストが高額
- 技術的問題が解決しても地域社会の反対など社会的リスクがある
- 投資回収に10年以上かかる見込み
これらのリスクに対応するため、国はFIT(固定価格買取制度)で1kWhあたり40円の価格で電力を買い取る支援を行っていますが、それでもリスクを避ける投資家が少なくありません。
一方で、一度商業ベースに乗ってしまえば、発電コストがかからず、運営できるため、非常に良いドル箱となります。
まとめ
日本において地熱発電が進まない理由