近年に地震や台風などによる自然災害が多く報道されています。自分の住んでいる地域の地質は大丈夫なのか?と不安に思う方も多く増えたかと思います。
当サイトでは地質図Naviを使って、自然災害に弱い地盤と地質を見極める方法をご紹介します。
ただし、自然災害と言っても、洪水、津波、土砂災害など多岐に渡りますので、以下のように分類して、ご紹介していきます。今回は、落石・崩壊編(がけ崩れ)です。
※あくまでリスクの確率論のお話になります。完全に自然を把握することは難しいので”絶対の”安全をお約束するものではないことをご了承ください。
1.土砂災害
・落石・崩壊編(がけ崩れ)
・地すべり編
・土石流編
2.洪水
土砂災害の分類(前提の確認)
まず、詳しい話の前に土砂災害については発生する事象等の違いから大まかに以下の3種類に分類されることを念頭に入れておいてください。
- 落石・岩盤崩壊(がけ崩れ)
- 地すべり
- 土石流
これらは、いずれも豪雨や地震に起因して発生することが多いですが、着眼点がやや異なります。
地質図Naviとは?(前提の確認2)
地質図Naviは、”国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)”が提供しているシステムです。
国が作成している無料で誰でも地質図などを閲覧できるシステムになっています。以下にURLを添付しておきます。
これに、実は自然災害のリスクが色々載っているので、こちらを参考にご紹介します。
落石・岩盤崩壊(がけ崩れ)しやすい地盤と地質(メイン)
急傾斜地と急な山岳地帯で発生します。岩石の風化や砂礫層からの落石、風化した地層の崩壊が主になります。
主な落石や崩壊は、やはり山岳部が圧倒的に多いです。ただし、都市部でも実は多くあります。具体的な例で見ていきます。
例1:東京都北区付近(段丘崖)
東京都北区付近を例に地質図Naviで見ていきます。
地質図Naviの左にあるサイドバーから”データ表示”👉”災害(波々マーク)”👉”急傾斜地崩壊危険個所”を表示してください。
下図の赤丸内に白いプロットが出てきます。これが、急傾斜地です。
これに、地質図を重ねてみます。”シームレス地質図”をクリックしてください。
地質情報をみると、急傾斜地の左側:段丘堆積物、右側:谷底平野になっており、地質境界と一致しています。
この谷底平野は、近くにある荒川の氾濫原の範囲です。昔は、ここまで荒川が氾濫して、川底を削って河岸段丘(※)が発達し、段丘崖を形成しています。これが、急傾斜地に認定されております。左側の地質は、段丘砂礫層になるため、落石等が懸念されます。荒川沿いの北区、荒川区、台東区までこの段丘は続きます。
(※河岸段丘については、こちらをご確認ください)
おまけ
実は、この段丘に沿って京浜東北線は作られています。アップダウンが少なく、作りやすかった等があったのかと思います。
例2:山梨県北部(段丘崖と火砕流)
山岳地帯でなく、平地にある急傾斜地は、多くが川の浸食でできた河岸段丘です。
もう一つの例として、八ヶ岳ができたときの火砕流と川の浸食でできた急傾斜地を紹介します。
この赤枠内は北部にある 八ヶ岳 から来た火砕流でできています。この火砕流は比較的新しいため、比較的脆く、川の浸食を受けやすい地質になります。
こちらも、火砕流との地質境界(赤線)に急傾斜地が集中しています。火砕流でできた地質が川の浸食によって、段丘崖を形成しています。
例1,2のような比較的大きな川がある地域では、段丘がどこにあるか注意が必要です。
例3:山岳部
山岳部は上図のように危険な急傾斜地がたくさんあります。こんなの全部気にしていたら、山にも行けませんね。
なので、山岳部に行く際の落石・崩壊編のリスクが高いポイントの簡単な見分け方を解説します。
1.事前通行規制区間である
事前通行規制とは・・・(国交省HP引用)
”””
大雨や台風による土砂崩れや落石等の恐れがある箇所については、過去の記録などを元にそれぞれ規制の基準等を定め、災害が発生する前に「通行止」などの規制を実施し、道路を利用する皆様の安全を確保します。
“””
国交省であらかじめ、危険な場所や災害が多い道路については、規制をかけます。このような地域は、普段から落石・崩壊が多い地域になりますので注意してください。
道路に落石や土砂が出てきているのは、崩壊を起こす前兆なことがあります。
3.対策工の裏に石や土砂が溜まっている
写真のように対策工(柵や擁壁など)の後ろに新しい落石や土砂が溜まっているのは注意です。
ただし、対策工がしっかり機能しているとも言えますので、対策工の設計を超えるような落石・崩壊でなければ大丈夫かと思います。
3.山に木や草がなく、土が見えてるような山肌
写真のように崩壊が頻繁に起きる山は、植生がありません。植物が育つ前に土砂と一緒に流されてしまうためです。
このような山肌は注意してください。
以下は、一般の方では判定が難しいかもしれませんので、参考程度です
・湧水、集水地形
水があると地盤が緩くなります。
・オーバーハング
・明瞭な緩急線
急激な地形の変化は、何か特殊な要因が必ずあります
・過去の被災跡
過去で起きた場所は、今後も起きる可能性が高いです。
まとめ
急傾斜地近くに住み場合は、地質図Naviの ”急傾斜地崩壊危険個所” を見ればどこを避けるべきか一目瞭然です。
さらに、これを定めているのは国交省になりますので信用できるかと思いますので、住居選びの際に参考にしてみてください。
”地すべり編”、”土石流編”、”洪水編”もありますので、よかったらご覧ください。
・地すべり編