ここでは、花崗岩の地化学分析における概論を説明します。
各々の分類の詳細については、今後別記事にします。
帯磁率 磁鉄鉱系ーイルメナイト系
石原舜三博士が1977年に提唱した分類方法です。
花崗岩中の磁力を計り、帯磁率が高い花崗岩を『磁鉄鉱系花崗岩』、低い花崗岩を『イルメナイト花崗岩』と呼びます。
Ishihara et al., (1979)によれば、それぞれ以下のように定義される
『磁鉄鉱系花崗岩類:3.0×10-3 SI Unit以上、イルメナイト系花崗岩類:3.0×10-3 SI Unit以下』
磁力を帯びる鉱物は、色々ありますが、主には磁鉄鉱の量に比例します。
ただし、風化等によって赤鉄鉱になると、磁力を帯びないので本来の帯磁率より低い値が出るので注意が必要です。
全岩化学組成
I-S-A type
Chappell and White (1974)によって提唱された花崗岩の区分です。
I-type、s-typeは、Igneous type、sedimentary typeの略称です。
I-typeは、比較的マントル起源物質が色濃く残っており、mafic(苦鉄質)な組織を示します。
そのため、苦鉄質鉱物である角閃石などの鉱物を含んでることがほとんどです。
一方で、S-typeは花崗岩質(珪長質、felsic)である大陸地殻の影響を色濃く受けています。
そのため、白雲母(muscovite)などを多く含みます。
その後、Loiselle and Wones (1979) によって上記の花崗岩類区分にI-typeのサブグループとして、A-typeが追加されました。
A-typeは、I-typeの中でも非造山帯で形成された花崗岩が分類されます。
分類方法としては、Collins et al., 1982 で提唱された Zr vs. 10000×Ga/Al などが主な分類方法となります。
アダカイト
海洋地殻がどの程度混ざっているか調べる指標になります。
Defant and Drummond (1990).
Sr/Y vs Yで比較します。
Yが少ないにも関わらず、Srが多い岩石が該当します。
詳しい区分は別途、記事で解説します。
テクトニクスによる分類 - syn-COLG、VAG、WPG ORG-
花崗岩の生成されたテクトニクスを区別する指標です。
Pearce et al. 1984で定義された区分で、以下の4種類に分けられます。
VAG:火山弧花崗岩(volanic-arc granites)
日本のようなプレート沈み込み帯でできるマグマによってできた花崗岩です。
syn-COLG:衝突帯花崗岩(syn-collisional granites)
大陸地殻同士の衝突によってできた花崗岩です。
大陸地殻の多い元素が花崗岩に混ざるため、珪長質のマグマになることが多いです。
そのため、不適合元素などを多く含む傾向にあります。
ORG:中央海嶺花崗岩(ocean-ridge granites)
中央海嶺のようなマントルが直接上がってくるような花崗岩です。
オフィオライト(超塩基性岩)から起源と考えられており、深成岩の上部にわずかに分布する。
オフィオライト起源であるため、苦鉄質鉱物を多く含みます。
WPG:プレート内花崗岩(within-plate granites)
プレートの沈み込みや大陸の衝突などの造山運動とは関係なく、安定したプレート内でマグマの上昇した地殻を突き破って形成された花崗岩である。
これは、A-typeの花崗岩と同じ似た傾向を示す。
アルカリ(Na-K)に富んだマグマが生成されるため、閃長岩のようなアルカリ分が豊富な岩石が生成さる。
判別図としては、以下のNb-Y 、Ta-Yb やRb-(Y + Nb) 、Rb-{Yb + Ta)が用いられます。
あくまで主観ですが、Rb-(Y + Nb) 、Rb-{Yb + Ta)のほうがうまく分類される印象です。
レアアースパターン図
上記の図は、ある花崗岩のレアアースパターン図(希土類元素パターン図)です。
これらの元素は、様々な岩石生成過程(マグマの分化過程)を示します。
例1.マグマの酸化還元条件
Euは、マグマが還元的な条件ではEu2+と鉱物に取り込まれます。すなわち、固相に取り込まれます。
そのため、花崗岩の中でもs-typeやsyn-COLGのような花崗岩では、Euが異常に低いことがあります。
例2.特定の鉱物の存在
ガーネットが存在すると、HREEが取り込まれます。
そのため、LREE/HREEが非常に高い比率を示す特徴があります。
産総研の以下のサイトが大変参考になります。
不適合元素
『Incompatible elements(不適合元素)= 鉱物に取り込まれにく元素』 です。
そのため、マグマの分化の過程で最後まで残るため、花崗岩のような珪長質な岩石に多く含み、玄武岩のような苦鉄質の岩石にはあまり含まれません。
鉱物に取り込みにくい原因は、イオン半径の大きさ and/or イオンの酸化数が一般的な元素たちと比べて、特徴的であります。
グラフとしては、SiO2 vs U, Th, Sn, Pb などを指標にしたりします。
同位体化学組成
初生マントル成分
マントルは均一ではなく、不均一であると考えられています。
メジャーなマントル端成分として、以下の4つがあります。
・ DMM (most depleted component in the Earth)
・ EM II (enriched component derived from sediments and subducted oceanic crust)
・ EM I (endmember of LoNd array)
・ HIMU (end-member of LoNd array with high U/Pb ratio)
これらについて、Rb-Sr、Sm-Nd、U-Pbなどの同位体を用いて、以下のような図で区別します。
年代測定
岩石の生成年代を特定して、区別します。
以下、代表的な年代測定方法です。
・ C 14
・ Sr-Rb
・ U-Pb,Th-Pb
・ K-Ar
・ 熱ルミネッセンス
それぞれの年代測定にはメリットデメリットがあり、必要に応じで使い分けます。
それは、また別記事にします。
まとめ
今回は、概論ということでざっくりまとめてみました。
それぞれの分類だけでも記事が1つ書けてしまうので、専門家の方には物足りなかったかもしれません。
今後、追加でそれぞれについて掘り下げた記事を書いていく予定です。