アダカイトとは?
一言で表すと、以下の通りです。
『沈み込んだ海洋地殻の直接の部分溶融によって中間質~珪長質のマグマから形成された新生代の火成岩類』
少し嚙み砕きつつ、定義を詳細に解説します。
『アダカイト』は、Defant and Drummond (1990) の『Derivation of some modern arc magmas by melting of young subducted lithosphere in a volcanic arc』によって、命名されました。
比較的若い海洋地殻(玄武岩質)がマグマ形成時に部分的に溶けることがあります。
その海洋地殻が溶けたマグマが分化を繰り返し、デイサイト質~花崗岩質のマグマが形成します。
そのマグマによってできたデイサイトや花崗岩などの火成岩を ”アダカイト” と呼ばれます。
その後、Peacock et al.(1994)では、『若いプレートの沈み込みに伴うことが明らかなもののみを典型的なアダカイト』と定義し、「主成分・微量成分化学組成がスラブメルトと共通な岩石」と再定義されました。
特徴
大きな特徴として、『Srに富み、Yや重希土類元素に乏しい特殊な微量元素組成』という特徴があります。
Defant and Drummond (1990) および Martin (1999) におけるアダカイトの特徴は以下である。
- SiO2>56wt%
- Al2O3が15wt%以上
- 一般的にMgOが3wt%以下
- Sr>400ppm
- 希土類元素が強い分別パターン (La(LREE)/Yb(HREE))N>20
- 重希土類元素に乏しい(Yb≤1.8 ppm, Y≤18 ppm)
- 87Sr/86Sr が0.7040以下
これらについて、少し掘り下げます。
Srが高い理由
Srは、斜長石に取り込まれる傾向があります。
Srは、Caと同じく2価の電荷を持ち、イオン半径も近い値のため、Caの富む鉱物には取り込まれるやすい傾向があります。
上記のことから、結晶化する際の斜長石の有無が重要になります。
アダカイトは斜長石の溶融、またはマグマの分化の過程で液相に斜長石が残らなかったことが関係あると考えられています。
希土類元素が強い分別パターン( (La/Yb)N>10) を示す理由
ここでのLaはLREE(軽希土類)の代表例、YbはHREE(重希土類)の代表例としての扱いです。
すなわち、LREE/HREEと書き換えても似たような意味になります。
このLREE/HREEが高い理由は、『ガーネット(ざくろ石)』の存在になります。
ガーネットは、重希土類が濃縮しやすい傾向があります。
ガーネットが、マグマ分化の過程で液相として存在していたことを示唆しています。
そのため、マグマの分化過程でガーネットがHREEを取り込み、中間質~珪長質のマグマにはHREEが欠乏したと考えられています。
以下の、図2と図3はアダカイト的な性質を示す花崗岩類と示さない花崗岩類の比較です。
アダカイト質の花崗岩類は、HREE(Gd~Lu)が低い特徴があります。
レアアースについての知識を深めたい方は、こちらもご覧ください。
重希土類元素に乏しい(Yb≤1.9 ppm, Y≤18 ppm)理由
これも、上記と同様にガーネットの存在が影響しています。
Yに関しては、角閃石や輝石の影響も多少見られます。
判別図
判別図としては、Defant and Drummond (1990) の以下の図が最もよく用いられる。
まとめ
アダカイトは、経済的にも銅鉱床や金鉱床の探査において重要な指標になります。
また、近年では以下のような他の生成過程の検討についても研究が進んでいるようです。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000403.000047048.html
今後、もう少し内容を拡充・変更していくかもしれません。
※十分調べたつもりですが、解釈に問題があったりしたら、申し訳ございません。ご報告頂ければ、修正致します。
参考文献
Nobutaka et al (2008) アダカイト研究の現状と問題点ーアダカイト質岩の多様性の成因とその地質学的意義ー
Paterno R. Castillo, An overview of adakite petrogenesis,Chinese Science Bulletin 2006 Vol. 51 No. 3 257—268
石原 舜三・村上 浩康(2006),レアアース資源を供給する鉱床タイプ, 地質ニュース624号,10―29頁,2006年8月
Kawamoto et al.(2014) マントルウェッジ流体の化学組成