地質

盛土の簡易点検の方法(How to check Embankments)

盛土といえば、熱海での事故がみなさんの耳にもまだ新しいかと思います。

この記事では盛土の簡易的な点検のポイントについて、解説します。

※危険な状況(台風や大雨、急傾斜など)で点検は実施しないでください

※あくまでも簡易的な点検になります。危険と思えば、お住いの自治体に連絡し、専門家の判断を仰いでください

盛土とは?

文字通り、”斜面や低地に土を盛って整えてある場所” のことを言います。

”造成”は、もっと意味が広くなり、”土地の形状を変化すること” を指します

よって、造成には、”切土”(斜面など切って平坦にすること)も含みます。

造成は、造成 ≒ 切土 + 盛土 のようなイメージかと思います

盛土の崩壊要因

盛土の崩壊原因は、主にこの3つのうちのどれか、またはこれらの組合せによって生じることがほとんどです。

・水(湧水、渓流、表面水)

盛土材

施工方法(対策工の有無、擁壁など)

この中で、自然現象は ”水” だけです。設計段階で水の流れや量を的確に把握し、自然に無理をさせない工法であれば、基本的に問題ありません。

ただ、自然現象を的確に把握するのは難しく、想定外のことが必ず起こります。

逆に、安全をみてハイスペックにしすぎても採算が合わず、予算は膨れ上がるでしょう。

予算と安全のバランスを見た施工が求められます。

盛土の例

盛土を点検する前に、どんなところに盛土があるのかわからないと思うのでいくつか例を紹介します。

山間部の平地

山は、本来平坦はほぼありません。基本的に、切土and/or 盛土を施工して平坦にしていることが多いです。

特に山間部で沢埋めてる盛土は、よく大雨時に崩壊しています。

段々になった宅地

段々に綺麗に住宅が並んでいるところは、盛土して綺麗にしてます。自然の斜面が綺麗に平坦になることはほとんどありません。

簡易点検ポイント

簡単に説明すると、以下のポイントをまずは確認します。

  1. 道路のクラック
  2. のり尻状況
  3. 湧水、渓流状況

1. 道路クラック

不安定な盛土は、道路面にクラック、または道路面が沈んでいることが多いです。

不安定な盛土では、道路に円弧状にクラックがあることが多いです。場合によっては、縁石や側溝が傾いていることがあります。

合わせて、道路面が沈下が見られます。特に、沢を埋めた盛土でよく見られます。

ちなみに、クラックとわだち(車の走った後)とよく間違われることがあるので、注意してください。

盛土点検
出典:全地連 防災点検要領

2. のり尻、のり面状況

動きがあると、のり尻、のり面に変状が出ます。

わかりやすい変化は、”のり尻のはらみ出し” や ”のり尻にある擁壁の傾倒、クラック” です

”のり尻のはらみ出し”は、盛土が滑ることで盛土斜面の下部が膨れる現象です。

盛土点検
のり面のはらみ出し (出典:全地連 防災点検要領 )

”のり尻にある擁壁の傾倒、クラック” は、上記と同様に盛土が滑ることで盛土を抑える擁壁が押されることでクラックや傾倒が生じます。横クラックよりも縦クラックが一般的に危険と考えられています。

のり尻にある擁壁の傾倒、クラック  
(出典:http://www.nilim.go.jp/lab/jbg/takuti/youheki/yoheki_manual.pdf)

3.湧水、渓流、河川・波浪の状況

盛土は、基本的に排水が正しくされるように排水溝やボックスカルバート、水抜き配管などが施工して、水はけがよくしてあります。下図のように渓流から水が溢れて、道路を流れている場合は正しく排水が機能していないので、危険性が高まっています。

盛土点検
のり面のはらみ出し (出典:全地連 防災点検要領 )

川や海の脇にある盛土の場合、河川や波浪による浸食がおきます。特に、台風など大雨時や高波時は一気に浸食されますので、このようなときは近づかないでおきましょう。

これらも、浸食されれば道路面に変状がおきますので、道路面のクラックや沈下を確認で十分です。または、反対岸からの確認しましょう。

決して、川の近くまで下りて点検するような行為はしないでください。

盛土点検
のり面のはらみ出し (出典:全地連 防災点検要領 )

まとめ

上記にまとめたのは、あくまで簡易的な点検方法のみです。

必ずしも、クラックがあっても安定している盛土もあります。

不安に思えば、まずは行政等に相談してみてください。

他の自然災害についてもまとめていますので、良ければご覧ください。

・地すべり編

住むべきではない地質(落石・崩壊編)

住むべきではない地質 (洪水編

地質
最新情報をチェックしよう!