炭素の同位体を用いた年代測定法について解説します。
抑えておくべき特徴と基本的な原理を解説しています。
こちらの記事も合わせて、読んでおくとスムーズに理解できます。
イメージしやすいように概念図を貼っておきます。
特徴
Point!
- 有機物を含む試料に適用される
- 比較的若い年代(数万年前まで)に適用される。(諸説あり)
- 初期値の推定が不要
〇有機物を含む試料に適用される
炭素を用いるので、金属のように炭素を含まない物質には使えません。
植物や生物などの有機物を含む試料に適用されます。
〇比較的若い年代(数万年前まで)に適用される。
半減期は、約5730年です。
これは、後述するRb-Sr法など比べるとかなり短い半減期になります。
そのため、数百万年前などの試料には適用できません。
〇初期値の推定が不要
14Cの存在比率は、現在と同様として計算されます。
そのため、現代の大気中の14Cの存在比率を初期値とすることができます。
ただし、正確には宇宙線の増減や海洋に溜め込まれた炭素の放出量によって変化するため、多少の誤差が生じることがある。
その場合は、年輪年代や年縞堆積物を利用した”年代較正”が実施されます。
利用用途
- 考古学
- 地質年代測定(比較的若い年代)
- 美術や骨董品
- 物質循環としてのトレーサー
原理
炭素には12C、13C、14Cが存在します。
このうち、14Cは放射性同位体で、以下のようにβ崩壊します。
また、大気中の炭素の存在比率は概ね一定です。
その大気中に住む生物の有機物も大気と概ね同じ炭素の存在比で存在します。
しかし、生物が死ぬと新たに炭素を取り込むことがなくなるため、β崩壊によって14Cが減少していきます。
一方で、大気上昇で宇宙線からの中性子と窒素が以下のような反応で14C生成されます。
この放射壊変の反応と宇宙線による生成によって、平衡状態となり、概ね一定となっている。
ただし、炭素同位体は光合成のしかたによって”同位体分別”が発生するため、試料によって補正が必要となります。
これらをまとめると上記のような概念図になります。
この原理を用いて、算出式は以下のようになります。
14Cの絶対量だと、炭素の含有量の影響を受けるので基本的に同位体は存在比率で扱います。
また、初期値は現在の炭素の存在比率を使用します。
年代較正
上述のように正確には、炭素の存在比率は変動しています。
これを補正するために国際標準パッケージが定められています。
それが ”IntCa109” と言い、2009年12月にReimer et al. 2009によって発表されました。
これによって、5万年前まで補正が可能となりました。
測定方法
現在、一般的な測定方法としては、”加速器質量分析法(AMS法)”があります。
イオン化した炭素を磁力を与えることで質量によって、加速度の変化が異なる性質を利用します。
これは、中学生で習う『フレミングの左手の法則』に基づいています。
質量がポイントとなるため、同量の質量の元素は誤差を引き起こすので、しっかり前処理を行います。
細かい説明は、別記事にでもします。
参考文献
・放射性炭素年代とその高精度化 中村俊夫*