オリフィスを用いた流量測定の計算方法について解説します。
計算式について
用いる計算式は、以下になります。
計算に用いた記号について、下記の表に一覧にしてあります。
qm(流量)
ReD(レイノルズ数)
β(絞り比)
C(流量係数)
計算が複雑なため、少し分解します。
また、このときL1、L’2は次の値になります。
コーナータップの場合:L1 = L’2 = 0
D・D/2タップの場合: L1 = 1.0 L’2 = 0.47
フランジタップの場合:L1 = L’2 = 25.4/D
ただし、ここでのDの単位はmmである。
ε 膨張係数
κ アイゼントロピック指数
可逆な断熱変化(等エントロピー変化)の状態において、密度の相対的な変化に対応する、圧力の相対的な変化の比
理想気体としては、比熱比に相当しますが、近似値としてκ=1.3を用いることが一般的です。
記号名称と単位
表.記号名称と単位の一覧
記号 | 記号名称 | 単位 |
qm | 質量流量 | kg/s |
C | 流量係数 | ー |
d | オリフィス孔径 | m |
D | 上流配管径 | m |
l | オリフィスと圧力取り出し口の距離 (1は上流側、2は下流側とする) | m |
L | L = l/D | ー |
p | 流体の絶対圧力 (1は上流側、2は下流側とする) | Pa |
ReD | Dに関するレイノルズ数 | ー |
β | 絞り直径比 | ー |
ε | 気体の膨張係数 | ー |
κ | アイゼントロピック指数 | ー |
μ | 流体の粘度 | Pa・S |
ρ | 流体の密度 | kg/m3 |
計算手順
計算では、流量係数Cに仮定値を設定し、繰り返し計算を行い、収束させていくことで流量を算出していきます。
今回は、D・D/2タップを用いた場合の蒸気流量の計算方法について解説します。
既知値としては、以下を与えていることします。
既知値 | 名称 | 値 | 単位 |
p1 | 上流側絶対圧力 | 100 | kPaA |
p2 | 下流側絶対圧力 | 95 | kPaA |
d | オリフィス径 | 0.1535 | m |
D | 配管径 | 0.2047 | m |
ρ1 | 密度 | 0.578 | kg/m3 |
μ1 | 粘度 | 12.3 | 10-6 Pa・S |
絞り比β、膨張係数εの導出
まず、絞り比βを求めます。
次に膨張係数εを求めます。このとき、アイゼントロピック指数 κ は1.3とします
仮の流量係数Cによる流量の算出
流量係数Cついて、仮定値を置きます。
今回は、JIS Z8762-2の付随書A表2より、C=0.610とします。
厳密にはレイノルズ数を求めないと決まってこないので、C=0.610で置いてしまうことが多いです。
これらを式に代入し、流量を算出します
レイノルズ数の導出
流量から配管径Dに対するレイノルズ数を算出します
\[ Re_D = \frac{4q_m}{\pi\mu_1D} \] \[ Re_D = 5.142 \times 10^5 \]流量係数Cの導出
仮の流量係数から求められたReDを用いて、流量係数Cを計算で導出します。
今回は、D・D/2タップを用いているため、 L1 = 1.0 L’2 = 0.47 とすると、流量係数C以下の値になります。
流量を再計算
新しい流量係数で再計算します。
\[ q_m \ [kg/s] = \frac{0.611}{\sqrt{1-(0.75)^{4}}} \varepsilon \frac{\pi}{4} (0.15)^{2} \sqrt{2(p_2-p_1)\rho_1} \] \[ q_m \ [kg/s] = 1.0187 \]繰り返し計算
上記までの計算を繰り返して、JIS Z 8762-1の付随書A 表1に従って、繰り返します。
今回の場合は、2回繰り返し計算したところで流量が小数点4桁まで収束したので、終わりにしていますが、厳密にはJIS規格に沿って計算するほうが良いかと思います
表.繰り返し計算結果の比較
試行回数 | 流量係数 C | 流量 qm | ReD レイノルズ数 |
0 | 0.610 | 1.01678 | 5.142×105 |
1 | 0.611 | 1.01870 | 5.152×105 |
2 | 0.611 | 1.01869 | 5.151×105 |
自動計算サイト
流体が蒸気の場合、自動でオリフィスの計算できるアプリを作成しました。コーナータップは、非対応です。また、計算方法等で誤差があるかもしれません。ご了承ください。
https://www.isenthalpiccalc.com/process/orifis
また、蒸気以外の流体に対応するために、密度と粘性を入力するverも作成しました。
https://www.isenthalpiccalc.com/process/orifis_all
※RenderというSaasを無料で使用しているため、サーバーがすぐに寝てしまいます。表示に時間がかかります。ご了承ください。